みなさんこんにちは。留学サポートスタッフです。
留学へ出かける理由も、出発するときの英語力も、人それぞれです。
そして今回の記事を書くにあたり、筆者自身が今でも忘れられない留学前後の出来事があります。
初めて留学を経験する前の筆者は、恥ずかしながら、「自分は英語が好きだし、英語力も平均よりは高い方だろう」と思っていました。英語に興味を持っていることにも、それなりの自信とプライドがあったと思います。
ある財団が主催する留学プログラムに参加することになり、渡航前には同期の留学生たちと集まる機会がありました。その中に、一人こんなことを話す人がいました。
「自分、学校では英語ずっと赤点だったんだよね」
渡航前に全員で決意を英語でスピーチしたときも、確かに彼の英語は、お世辞にも流暢とは言えませんでした。正直なところ、そのときの筆者は、「彼は今の英語力で海外留学に挑戦して大丈夫なのかな」と思っていました。
ところが――。留学を終え、帰国後の報告会。もう一度、全員が英語でスピーチをしました。筆者は驚きました。一番自然に、堂々と、流暢に英語を話していたのが、あの彼だったのです。
悔しい気持ちも、少しありました。でもそれ以上に、「この人は海外で、いったいどれだけ英語を使ったんだろう」「どれだけたくさんの挑戦を積み重ねたんだろう」という尊敬の気持ちが湧いてきました。
同じ留学期間でも、過ごし方によってこんなにも変わる。その経験から筆者は、留学では、スタート地点よりも「現地でどう過ごすか」にこだわった方がいいということを学びました。
今回は、研究データや実際の短期留学経験者の声も見ながら、短期間でも英語をぐっと伸ばす人が、現地でどんな行動をしているのかを考えてみたいと思います。
まず、一言でいうと……
短期留学を充実させるために、最初から英語が上手である必要はありません。必要なのは、「英語ができてから話す」ではなく、「話しながらできるようになる」という気持ちです。
今回、研究や実際の留学経験者の声を調べていくと、特に次の5つがポイントとして見えてきました。
- 間違える前提で、とにかく先に話す
- 授業外に「1日1英語ミッション」をつくる
- 日本語を禁止するのではなく、意識して英語時間を増やす
- 言えなかった英語を、その日のうちに回収してもう一度使う
- 昨日の自分と比べる「小さな目標」を持つ
どれも、特別な才能は必要ありません。明日からでもできることばかりです。
① 伸びる人は「正しい英文ができてから話そう」としない
英語を真面目に勉強してきた人ほど陥りやすいことがあります。それが、「この文法で合っているかな」「過去形だから……」「この単語でいいのかな」と頭の中で英文を完成させてから話そうとすること。その間に会話は次へ進んでしまいます。
短期留学経験者の公開されている体験談を見ても、英語力の向上を感じた人から繰り返し出てくる言葉があります。それが、「間違いを恐れずに話す」という姿勢です。
3週間のフィリピン留学を経験した大学生は、英語学習で意識したこととして「間違いを恐れず積極的に話すこと」を挙げています。別の4週間の大学生も、スピーキングを伸ばすため「完璧な文法より、まず自分の考えを伝えること」を優先していたと振り返っています。
これは精神論だけではありません。海外留学経験によって、「英語でコミュニケーションを取ろうとする意欲(Willingness to Communicate)」や、スピーキング能力、授業での発言参加が向上したという研究もあります。
大切なのは、正しく話すことより、まず会話に参加することです。
例えば今日から、先生に質問されたら、完璧な文章を考える前に、「I think…」と、とりあえず言ってみる。それだけでも構いません。その後で言葉を探せばいいのです。
今日からできること
「1日3回、自分から先に話しかける」
まずはこれくらいで十分です。
②伸びる人は「授業が終わったら英語も終了」にしない
語学学校では、一日何時間も授業を受けます。もちろん、その時間はとても大切です。でも短期留学では、もう一つ非常に大切な時間があります。授業が終わった後です。
実際、2週間の短期留学を経験した56歳の社会人の体験談が、とても参考になります。
その方は、バディプログラムへ参加する。大学の授業へ行く。飲食店で自分で注文する。観光施設で質問する。街の人へ道を聞くなど、「自分から英語を使う場所をつくる」ことを意識していたそうです。
これは、すごく良い方法だと思います。なぜなら海外へ行ったからといって、自動的に外国人が次々と英語で話しかけてくれるわけではないからです。
研究でも、海外留学における社会的な交流や第二言語を使う機会は、言語学習を考えるうえで重要な要素とされています。
そこでおすすめしたいのが、「1日1英語ミッション」です。
難しいことでなくて構いません。
- 月曜日:自分でコーヒーを注文する。
- 火曜日:先生におすすめのフィリピン料理を聞く。
- 水曜日:違う国の学生をランチに誘ってみる。
- 木曜日:お店のスタッフに商品の違いを聞く。
- 金曜日:今週仲良くなった人に週末の予定を聞く。
これなら、「英語を勉強しなきゃ!」という感じが少し薄れませんか?
生活そのものを、小さな英会話教室にしてしまう。これが海外留学の強みです。
③ 「日本人とは絶対話さない!」まで頑張らなくてもいい
留学前によく聞くアドバイスがあります。
「海外へ行ったら、日本人とつるまない方がいい」
確かに、日本人だけで毎日過ごし、朝から晩まで日本語だけを話していたら、せっかくの英語環境を十分に生かせないかもしれません。
でも、日本人を完全に避ける必要まではありません。むしろ、それは精神的に疲れてしまうこともあります。
2024年に発表された留学研究では、現地の人との交流が多い学生、国際学生との交流が多い学生など、異なる人間関係のパターンでも英語のスピーキング力の向上が確認されました。必ずしも「ネイティブだけと話すこと」が唯一の正解ではありません。
英語は世界中の人が使う言葉です。フィリピン人。韓国人。台湾人。ベトナム人。英語を使って話せる相手なら、その会話はすべて練習になります。
だからこそ筆者がおすすめしたいのは、「人を避ける」のではなく「英語で過ごす時間を決める」こと。例えば、「ランチは違う国の学生と食べる」「夕食後30分は英語だけ」「新しい友達を週に3人つくる」くらいで構いません。無理に24時間英語だけにするより、英語を使う場面を自分から少しずつ増やす。それで十分です。
実際、8週間の留学経験者も、日本人以外の友人と食事や休み時間を過ごし、英語を使うことで「海外にいるな」と実感したと振り返っています。

④伸びる人は「言えなかった!」を、そのままにしない
海外生活では、必ずあります。「あれ、英語で何て言うんだろう?」という瞬間。
例えば、レストランで、「取り皿をもう一枚ください」と言いたかった。でも言えなかった。何となくジェスチャーで伝わった。そして、そのまま忘れる。
これでも生活はできます。でも、英語を伸ばしたいなら、この「言えなかった!」こそ最高の教材です。
その日の夜、「取り皿をもう一枚くださいって、英語でどう言うんだろう?」と調べる。翌日、先生に聞く。そして今度は自分の口から言ってみる。
こうすると、その表現は単語帳の英文ではなく、自分が本当に必要だった英語になります。
会話中に相手から訂正や言い換えなどのフィードバックを受け、それを使い直す機会は、第二言語習得で重要とされ、留学中の会話研究でも取り上げられています。
また、外国語学習では、答えをただ読み直すよりも、一度自分の記憶から思い出して使う「retrieval practice(想起練習)」が語彙の定着に有効だという研究があります。
そこでおすすめしたいのが、夜の「3つだけメモ」です。
その日、①言えなかった言葉、②初めて聞いた表現、③明日使いたい英文を、一つずつメモします。
10個も20個も必要ありません。3つだけ。そして翌日、そのうち一つを先生や友達との会話で使ってみる。短期留学なら、この繰り返しだけでもかなり濃い学習になります。

⑤ 伸びる人は「ペラペラになる」を目標にしない
「今回の留学で英語をペラペラにする!」という目標は、あまりおすすめしません。なぜなら、「ペラペラ」の基準が分からないからです。2週間たっても、「まだ全然ペラペラじゃない……」と思ってしまいます。
それよりおすすめなのは、昨日の自分ではできなかったことを、一つ増やすこと。例えば、
- 1日目。先生の質問を聞き返してばかりだった。
- 5日目。一度で分かる質問が増えた。
- 1週目。「Yes」「No」で終わっていた。
- 2週目。理由を一文足せるようになった。
最初は自分から話しかけられなかった。でも今日は、「Where are you from?」と聞けた。これでいいのです。
実際、4週間留学した大学生の体験談では、最初は先生へ何度も聞き返していたものが、4週間後にはほとんど聞き返さなくなり、本人もリスニング力の伸びを実感しています。さらに本人は「とにかく積極的に英語を話し、話す量を増やす」ことを意識していました。
留学研究でも、海外滞在は流暢さや総合的な言語能力の向上につながり得ることが示されています。
ただし、短期留学ですべての英語力が劇的に変わるわけではありません。
だからこそ、小さな変化に気づくことが大切なのです。
⑥実は、英語が伸びる人は「失敗した回数」が多いのかもしれない
留学前、「英語ができないから不安」と相談されることがあります。その不安を持っている方にこそ伝えたいことがあります。
できない状態で行っても大丈夫です。最初の英語力が低ければ、伸びる余地もたくさんあります。
海外留学のメタ分析でも、留学プログラム全体として中~大程度の言語習得効果が確認されています。
もちろん、「英語が苦手な人ほど必ず伸びる」という意味ではありません。
でも、間違えた。聞き取れなかった。通じなかった。もう一度言った。伝わった。この経験を重ねることができるのは、今まだ完璧ではない人の特権でもあります。
英語を上達させたかったら、失敗しないことを目指すより、安心してたくさん失敗できる場所へ行く。そんな考え方があってもいいと思います。
⑦短期留学なら、こんな「自分ルール」を持って行ってみよう
ここまでのお話を、実際に使える形にまとめます。留学へ行く前に、スマートフォンのメモに次の5つを保存してみてください。
私の短期留学5ルール
- RULE 1:間違えても、まず一言しゃべる。
- RULE 2:毎日一つ、授業外で英語を使う。
- RULE 3:毎日一度は、違う国の人と話す。
- RULE 4:言えなかった英語を3つだけ持ち帰る。
- RULE 5:昨日よりできたことを一つ見つける。
これくらいなら、「私にもできそう」と思いませんか?
英語の才能は必要ありません。TOEIC800点も必要ありません。必要なのは、少しだけ行動することです。
実際の現場目線で感じること
短期留学について、「2週間しか行けないのですが、意味はありますか?」「1か月では短すぎますか?」という質問を受けることがあります。
もちろん、3か月。半年。1年と滞在できれば、英語に触れる時間は増えます。でも、「短い=意味がない」ではありません。
2週間でも、毎日先生と話す。街へ出る。外国人の友達をつくる。分からない英語を調べる。翌日また使う。これを繰り返した2週間と、授業だけ受けて、それ以外はずっと日本語で過ごした2週間。同じ336時間でも、中身はかなり違います。
筆者が昔出会った、「英語は赤点ばかりだった」という彼も、きっとスタート地点ではなく、その後の一日一日の使い方に誰よりもこだわったのだと思います。
あのとき彼の英語を聞いて感じた悔しさは、今ではとても良い思い出です。そして同時に、「英語力って、出発前に決まっているものじゃないんだ」と教えてもらった出来事でもあります。
編集後記
筆者が初めての留学で学んだ一番大きなことは、英語そのものより、「最初にどれくらいできたかで、人の成長を決めてはいけない」ということだったのかもしれません。
渡航前、英語が苦手だった彼。少し英語に自信があった筆者。スタート地点だけを見れば、筆者の方が少し前にいるように見えたのかもしれません。
でも、留学は短距離走ではありませんでした。現地へ行ってから、誰と話したか。何回失敗したか。どれだけ知らない場所へ行ったか。どれだけ自分から声をかけたか。その積み重ねが、少しずつ差になっていったのだと思います。
そして今なら、あの頃の筆者にもこう言いたいです。
「できることを証明するために留学するんじゃないよ。」「できなかったことを、できるようにするために行くんだよ。」
短期留学だからこそ、一日は貴重です。でも、だからといって焦らなくても大丈夫。今日より明日。一つ多く話す。それだけから始めてみてください。
私たちも、皆さんが安心してたくさん挑戦し、たくさん失敗できる留学を一緒につくっていきたいと思っています。
参考文献
- Heinzmann, S., Hilbe, R., Ehrsam, K. & Bleichenbacher, L. (2024). Study abroad students' social contacts in different linguistic contexts and their relationship with English use and development. Language Learning, 74(S2), 24–57. DOI
- Kang, D.-M. (2014). The effects of study-abroad experiences on EFL learners' willingness to communicate, speaking abilities, and participation in classroom interaction. System, 42, 319–332. DOI
- Karpicke, J. D. & Roediger, H. L. (2008). The critical importance of retrieval for learning. Science, 319(5865), 966–968. DOI
- Kim, K., Lee, J. H. & Lee, H. (2024). Systematic review synthesising the effects of study abroad experience on the development of language fluency. Oxford Review of Education. DOI
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