スキル・人柄の評価に加え、在留資格の適合性も選考段階から確認することで、内定後のトラブルを防ぐことができます。

外国人候補者の選考は、日本人採用と同じ「スキル・経験・人柄」の評価軸に加え、もう一つの軸を持つ必要があります。それが「在留資格の適合性」です。内定を出した後に申請書類を整えようとして初めて、職務内容と学歴や資格の関連性が認められないことに気づく、あるいは在留資格の要件を満たしていないことが判明する、というケースは珍しくありません。
選考の段階でこうした不適合を早期に発見できれば、候補者にとっても企業にとっても無用な時間と労力を省くことができます。逆に、人物・スキルのどちらも申し分ない候補者であっても、在留資格の観点から採用に進めないケースがあることも、あらかじめ認識しておく必要があります。
ここでは、外国人の選考・面接において在留資格の観点から確認しておきたいポイントを整理します。採用プロセスの全体像については、外国人採用の流れをあわせてご参照ください。
外国人が日本で就労する際に最もよく利用される在留資格の一つが「技術・人文知識・国際業務」です。この在留資格が対象とする活動は、「理学・工学等の自然科学の分野または法律学・経済学・社会学等の人文科学の分野に属する技術もしくは知識を要する業務」と「外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務」に分類されます(参考:出入国在留管理庁 技術・人文知識・国際業務)。
この在留資格においては、原則として、担当予定の職務内容と、応募者の学歴または職歴との間に「関連性」があることが必要とされます。具体的な要件の目安は次のとおりです。
担当予定の業務が「マーケティング」であれば経営学・経済学系の専攻が、「システムエンジニア」であれば情報工学・コンピュータサイエンス系の専攻が、それぞれ関連するとみなされる可能性があります。反対に、取得した学位の分野と担当業務の乖離が大きい場合は、在留資格の許可が得られないこともあります。
選考の段階で確認しておくとよい点:
すでに日本国内に在留している候補者については、在留カードの内容を確認することが重要です。在留カードは、中長期在留者に交付される公的な身分証明書であり、現在の在留資格や就労の可否を確認するための基本的な書類となります(参考:出入国在留管理庁 在留カードとは)。なお、2026年6月14日より、マイナンバーカードの機能が付加された新しい形式の在留カード(特定在留カード)が導入されています。旧形式のカードも有効期限内は引き続き有効であるため、選考時にはいずれかの形式のカードが提示されることもあります。
主な確認事項:
在留資格によっては、原則として就労が認められていないものがあります(例:「留学」「家族滞在」等)。こうした在留資格を保持している方が「資格外活動許可」を取得している場合でも、就労できる時間や活動範囲に制限があることが多くあります。また、すでに何らかの就労資格を持っている場合でも、その活動範囲が採用後に担当する職務内容と一致しているかどうかを、選考段階から把握しておくことが助けになります。
外国人候補者との面接では、通常の選考に加えていくつかの実務的な配慮が必要になることがあります。
職務内容を具体的に伝える 候補者が自身の学歴・職歴と照らし合わせて、在留資格との適合性をある程度自己評価できるよう、担当業務・求めるスキル・役割の範囲を面接時に明確に伝えることが助けになります。
国籍・信条等に関する不当な質問を避ける 選考において、国籍や宗教、出身地域を理由とした差別的な取り扱いは認められません。質問は業務上の適性に関連するものに絞ることが原則です。
海外在住の候補者へのオンライン対応 海外から応募している候補者の場合、面接はオンラインで行うことが現実的です。内定前の来日については、在留資格上の制約もあるため、渡航を前提とせずに選考を進めることが基本となります。
日本語・業務言語の確認 業務上必要な場合は、日本語によるコミュニケーション能力を面接の一部として確認します。職務内容によっては母国語が主たる業務言語となる場合が多く、求める言語能力(母語・対応言語など)を事前に明確にしておくとよいでしょう。
選考段階での在留資格の確認が不十分だと、内定後の手続きでつまずくことがあります。ここでは、選考時に見落とされやすい典型的なポイントを挙げます。
① 専攻と職務内容の乖離/業務量の不足 例:文学部卒の候補者にシステムエンジニアの職を提示するケースなど、大学での専攻と担当予定業務の分野が大きく異なる場合は、在留資格申請において「関連性なし」とみなされ、許可が得られないことがあります。また、採用後に想定される業務量が、新たに取得する在留資格の活動として十分か(活動時間・業務量が不足しているとみなされないか)という点も確認しておくとよいでしょう。
② 学歴によらない場合の実務経験の要件を満たさない 学歴だけでは要件を満たさない候補者が実務経験によって要件を満たそうとする場合、担当させる業務の区分によって必要な経験年数が異なります。外国語を活かした業務(翻訳・通訳・語学教師など、いわゆる「国際業務」)では、原則として関連業務の実務経験が3年以上必要とされます(ただし、大学を卒業した方が翻訳・通訳または語学の指導に従事する場合を除きます)。一方、「技術」または「人文知識」の分野の業務では、大学等の学歴に代えて10年以上の実務経験が求められる場合があります。こうした要件を確認しないまま選考を進めるケースが見られます。
③ 従前の在留状況が適正であったか すでに日本に在留している候補者については、これまでの在留資格に基づく活動が、その資格の内容に沿って適切に行われてきたかどうかも、選考における判断材料の一つとなります。
④ 必要な届出が行われているか 就労資格で在留する外国人が退職・転職した場合などは、原則として14日以内に出入国在留管理庁への届出(契約機関に関する届出)が必要です(参考:出入国在留管理庁 契約機関に関する届出)。前職を離れた候補者については、こうした届出が適切に行われているかも確認しておくとよいでしょう。
📋 選考段階からのご相談も承ります
「この候補者の在留資格は切り替えられますか?」「職歴と業務内容の関連性はどう判断すればよいですか?」など、選考の途中段階でのご相談にも対応しています。まずはお気軽にご相談ください。
外国人採用の選考においては、「スキルと人柄の評価」と「在留資格の適合性確認」を並行して進めることが、採用プロセス全体をスムーズにする鍵となります。学歴・職歴と職務内容の関連性、そして現在の在留資格の内容は、選考段階で把握しておくほど、内定後の手続きや申請に余裕が生まれます。
次のステップは、候補者に提示する職務内容をもとに、どの在留資格を申請すべきかを具体的に検討することです。この点については、外国人採用の流れのSTEP 4「在留資格の確認・検討」で詳しく解説しています。
外国人採用における根本的な考え方については、外国人採用はビザ申請の前から始まるもあわせてお読みいただけますと幸いです。
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